劣性遺伝?青紋の遺伝と形質についての考察。

ニジイロクワガタ(青紋)
Phalacrognathus muelleri
オーストラリア クイーンズランド州

今回はニジイロクワガタ「青紋」の形質と遺伝について。考察回です。思うところがあり突貫で書き上げました。

まず「青紋」の際立つ外見的特徴は、何といっても濃い青色の上翅の紋。上品で美しいですよね。初めて見たときは感動しましたし、どっぷり飼育にハマるきっかけのひとつでした。

※ちなみに「紫紺系(紫紺×他カラーを交配した際の中間色)」は青紋と混同されやすいが全くの別モノです。これに関しては紫紺グリーンという呼び方の方が分かりやすいし、誤解も生まれにくい気はする。

劣性(潜性)遺伝?

早速ですが青紋の遺伝形式について。

「上翅の紋」の【出る】【出ない】という二元的な条件においては、メンデルの法則の「劣性(潜性)遺伝」で説明できると考えています。

理屈だけでは説得力に欠けるので、自身の飼育下での交配例を以下に示します。

ここではメンデルの法則に則り、純系(ホモ接合体)の青紋を【ww】、野生型(ノーマル)を【WW】とします。

純系の青紋【ww】同士をインラインで交配した次世代は、理論上100%青紋【ww】となります。少なくとも私の飼育下では同様の結果が得られています。

またアウトラインの交配も行いました。

青紋【ww】×野生型【WW】の交配から得られたF1は、外見状は野生型(ノーマル)だが青紋因子は存在する、ヘテロ接合体【Ww】となります。

そしてF1のヘテロ接合体【Ww】同士を同腹インラインすると、F2では低確率ながら青紋【ww】が出現しました。

F2で青紋にならなかった個体の中にはヘテロ接合体【Ww】と野生型【WW】が混在しますが、目視での見分けはつきません。

以上が飼育下での検証で、青紋の「上翅の紋」は劣性遺伝と考えたわけです。また雌雄を逆パターンで交配しても結果は同じでした。

とはいえ..

「上翅の紋」だけが青紋の特徴では無いという話。青紋遺伝子は、複数の形質に影響をもたらしている「多面発現」ではないかと考えています。

ですから形質によっては遺伝形式が異なる可能性もあるわけです。

そこで今回は青紋の「体表のツヤ消し」形質に注目。特に前胸部を観察する事で分かりやすく、サンドペーパーでヤスリがけしたようなマットな質感です。

先述した交配の事例に戻ります。
青紋【ww】×野生型(ノーマル)【WW】を交配したF1(ヘテロ接合体)【Ww】の前胸部を観察したところ、「ツヤ消し」の形質は全個体で観察されました。

F1で形質が失われないということは、視覚上の「ツヤ消し」形質は劣性遺伝ではないという事になります。

つまり形質の「どの部分」に着目するかで結論が変わってしまう。

その他にも「上翅のシワ」、インブリードを繰り返した際の「生育不良(産卵や生育に支障が出る)」の傾向も観察できますが、これらについて、今のところ確実な遺伝性や遺伝形式の結論は出せませんでした。「青紋範囲」についても同様です。

ただそうはいっても、「青紋」=上翅の紋として認識されている点は重要です。「ツヤ消し」などの形質は副次的で、そもそも一般的に認識されているか怪しいくらいです。

以上の前提を踏まえるならば、青紋を「劣性遺伝」として説明する事はそれなりに妥当と考えています。複数ラインを数世代、累計で数百頭は管理してきましたが、遺伝形式に例外らしいものは見られませんでした。

純系の青紋でインラインをした場合は次世代の青紋率は100%ですから、固定可能と評価する事も問題ないように思います。

私はメンデルの法則を正確な確率予測ではなく、飼育下で青紋が【出る】【低確率で出る】【出ない】という大まかな予測ツールとして用いています。個人の飼育条件というものは大抵は母数が少なく、特にアウトラインで交配を行う場合に確率論の計算をしても、結果は理論値から大きく外れやすくなってしまうんですよね。

最後に私が現在飼育している「青紋」の系統をいくつかご紹介。

青紋の遺伝は、通常色(レッド・ノーマル・紫紺など)や、ホワイトアイ(劣性遺伝)とは独立に存在し、これら異なる2要素、3要素を重ねた個体(コンボ)は交配条件を設定することで狙って作出することが可能になります。

●青紋紫紺系
青紋×紫紺の交配からの累代。紋の色は紫紺の影響で、通常の紺〜紫色に変化する個体もいる。

●青紋ホワイトアイ
劣性遺伝同士のコンボで、最初に作り上げるプロセスが非常に難易度が高かったであろうと思われます。

●青紋レッドホワイトアイ
青紋は通常は赤と隣り合わせで発色しないため、青紋とレッドのコンボは若干両立の相性が悪いように思います。レッドベースの青紋は鮮明で綺麗ですね。

このような「コンボ」の存在こそ、青紋の明確な遺伝性を逆説的に示しているともいえます。

しかし改めて某氏のブログをざっと読みましたが、まあ色々とツッコミどころ満載ですね。

各タイトルで斬新な問題提起をして回っているものの、自説を確かめようと行動した形跡が見当たらないのは読み手としては困ったものです。

そこまで遺伝性に違和感があるのであれば、あれこれ口走る前に、手元で交配の検証をすれば良いのでは?とは思いますが。

まさにフラットアース論者、ID論者などが当てはまることですが、検証意欲を見せない懐疑主義者ってもはや説得不能じゃないですか。そうかと思えばハルシネーションの可能性すら疑わずにAIの出力をポンと引っ張ってくる訳で、こちらは毎度驚かされるばかりです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

参考資料
江島洋介「これだけは知っておきたい図解ジェネティクス」オーム社 2021

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