メタリフェルホソアカクワガタ(亜種イソガイ)|飼育記録VOL.2

メタリフェルホソアカクワガタ(亜種イソガイ)
学名:Cyclommatus metallifer isogaii
産地:インドネシア 北マルク州 タリアブ島

2年連続 BE-KUWA飼育レコード更新。ホッと一息つけました。また今回のレコード号にて獲得されました皆さまも大変おめでとうございます。

今回はインドネシアのスラ諸島(タリアブ島・マンゴレ島)に産するメタリフェルホソアカ(亜種イソガイ)の飼育について書いていきます。前サイクルの飼育記録はこちら

ペアリング・産卵セット

オス88.2mm(2024年度レコード個体)に同腹のメス29〜28mmを交代で3個体をペアリング。わたくわさんブログで紹介されている通り、オスの気性が荒いため1-2日の短期間で同居を解除しています。コバシャ小ケースにマットのみを固詰めした産卵セットで、1ヶ月ほど経過すると壁面に初令幼虫が観察されます。3セット中2セットから60頭ほどの幼虫が得られました。初令初期で幼虫を回収し早期でボトルに投入していきます。

幼虫飼育

前サイクルの結果が良好であったため、容器選択・餌内容は基本的に変えずに続行。産卵セットから得られた初令幼虫を2024年7月〜順次1100ccボトル投入。

ハンドプレスでの手詰め・プレス機での加圧を交互に行いガチ詰めしています。手詰めorプレス詰めの議論はありますが、どちらにも違う利点があると思います。私は腕力に自信がないため機械の力を借りていますが、パワーのある方には不要かもしれません。

詰め圧をうまく反映する容器の素材・形状も重要です。私のところでは耐圧性の高いPPボトルを使用しています。各種PPボトルは蓋のフィルターが食い破られやすく、対処方法として通気性の高い熱帯魚用のフィルターをカットして交換しています。コバエの繁殖はサイズに結果に直結するだけではなく、人間関係にまで悪影響を与えるため要注意です。

管理温度はエアコンで通年20℃。前年度より若干下げ目で管理しています。1本返しを念頭に置いた飼育選択のためボトルの交換はせず、羽化までボトル内で管理しています。

またギリギリの水分調整に失敗したボトルが一定数あり15頭ほどの幼虫が落ちてしまいました。蛹時点でのアクシデントも複数あり、オスの完品羽化数は想定より少なくなってしまいました。

蛹室形成をする本亜種の幼虫。ボトル壁面に●型の綺麗な窓を作る個体は特に大型になりました。理由は想像することしかできないのですが、前蛹期のエネルギーロスとかが大きいのではないかと考えています。

羽化

メスは2025年1月、オスは同年3月から羽化が始まりました。オスの幼虫期間は最短で7ヶ月・最長9ヶ月程。

⚫︎No1. 2025年3月19日 83mm
⚫︎No2. 2025年3月25日 88mm
⚫︎No3. 2025年3月27日 85mm
⚫︎No4. 2025年4月16日 86mm

⚫︎No5. 2025年4月18日 90mm
遂に大台突破!2024年度飼育レコード数値を大幅に超えており、ここまでの最大個体です。後続でのサイズアップを暫く待っていたのですが、この個体を超えるサイズは現れず。本個体をむし社様に持ち込み計測に出し、計測値90.7mmにて2025年飼育レコードに登録しました。

メタリフェルホソアカクワガタ 亜種イソガイ特大個体

⚫︎No6. 2025年5月8日 88mm
このあたりのサイズ帯になると十分な迫力を感じます。

⚫︎No7. 2025年5月8日 86mm
⚫︎No8. 2025年6月5日 82mm
⚫︎No9. 2025年6月22日 85mm
⚫︎No10. 2025年6月28日 89mm
⚫︎No11. 2025年7月6日 85mm
⚫︎No12. 2025年7月25日 83mm

総括

基本的にサイズアベレージは高く維持できました。そして前サイクルより飼育数を抱え、管理温度を若干下げるなど微調整は加えての飼育がサイズアップに繋がったと感じています。

反省点ですが、去年の飼育ブログでは水分量の話がメインになってしまい、その部分だけが強調された形で読み手に伝わってしまった感が否めないです。自分自身の思考も水分の話に引っ張られすぎていました。

基本的には詰め圧と高水分の両立でマットの中の空気を抜くことで嫌気状態をつくるイメージです。詰め圧をかけずに大型を目指すとなるとまた違ったプロセスが必要になってくるのだと思います。既に手元にはWF3の幼虫がいますが、今回はそのあたりのバランスを意識してボトル詰めを行いました。今後もさらなるサイズアップを目指していきます!

番外編!?

こちら前蛹時点で結構デカいとマークしていた一頭。しかし蛹化を確認しても全く顎先が見えず、とても嫌な予感がして掘り出したら。。顎がグニャグニャに巻かれて悲惨な状態になってます。案の定1週間ほどで☆になりました。奇形ではあるため数値としての信頼性は低いですが、蛹の頭幅は19.8mmと前年度のレコードに比べて明らかに幅が出ています。正常に羽化した場合には2024年度レコードを悠々と超えるポテンシャルがあったと思われ、非常に悔やまれます。

●レコード個体を改めて撮影。

メタリフェルホソアカクワガタ(亜種イソガイ)2025年度飼育レコード個体(写真その1)
メタリフェルホソアカ(亜種イソガイ)2025年度飼育レコード個体(写真その2)

さて今回紹介したスラ諸島(タリアブ島・マンゴレ島)のメタリフェル亜種イソガイ。地理的には最大亜種フィナエを産するバンガイ諸島(ペレン島・バンガイ島)に近く、両諸島の間には連続した小島が続いています。

この両諸島全体はBanggai-Sula Microcontinentとよばれる構造区分に分類されており、氷期にはスラ諸島・バンガイ諸島間が陸続きになった可能性(地質図naviの海面レイヤを参照)があり興味深いです。※地質図naviのリンクを開き、水位を-120mに設定すると確認ができます。

海水面低下により両諸島が陸続き、あるいは島間距離が短くなることで、遺伝子の交換が行われた可能性があると予想(妄想)しています。

こうしてみると飼育下における本亜種の表現の振れ幅も納得するところがあります。腿節の黄紋は強く出現する個体から全く無い個体まで個体差が大きく、上翅肩部の尖り度合いも同様で個体差があります。

このように飼育下のオスでハッキリとした特徴が出にくいのに対し、メスについては上翅の光沢の強さが非常に分かりやすいポイントであるかと思います。この特徴は当方の飼育下では個体差が無く安定しており、おそらく最も信頼度の高い特徴ではないでしょうか。

いつも以上に熱が入り長文ブログとなってしまいました。
最後までご覧いただきありがとうございました。

リンク
BE-KUWA97号 2025年クワガタ飼育レコードコンテスト
本亜種の野外での観察記録(iNaturalist)
わたくわさんブログ
産総研 地質図navi

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